タイムドメイン理論によるスピーカー

図4にダイナミックスピーカーの基本を示します。信号電流に従って磁気回路の中に設けられたボイスコイルに力が発生し、それにつながったコーン紙が音の形に従って振動し音を空間に伝えます。
(仮想グランド)
正確にコーン紙を動かすためには基準静止点となる磁気回路が動いてはなりません。従来方式では磁気回路はフレームを介してスピーカーボックスのパネルに固定されております。しかしボックスやフレームは常に振動していますので静止点とは言えません。それを基準とするコーン紙からの音はピュアーではありません。
(図5)

理論的には磁気回路をグランドに固定すれば理想ですが、大地も大地とユニットを結合するコンロッドも振動しますから実現できません。
タイムドメイン方式では磁気回路は仮想グランドに固定されています。
(図6)
仮想グランドは振動系に対して1000倍以上の慣性質量を持つ金属シャフトです。これは振動を伝えないゲル状物質で空間に支持されていますので、理想的なグランド、基準静止点と言えます。

(小口径シングルユニット)
音圧波形を正確に再生するためには、必然的に小口径のシングルユニットとなります。従来の様に多くのユニットから出る音波は合成しても元の音の形にはなりません。また口径が大きいと振動板が分割振動しますし、重くなって正確な動きは望めません。
ちなみにパイプ型Marty101の振動板の径は5センチ、振動系の質量は1.4グラムで20センチクラスユニットの10分の1以下です。車重が10倍ではエンジンやブレーキをいくら強力にしても機敏な動きが望めないのと同様です。
(筒型)
従来の箱形エンクロージャーはパネルで構成されていますので箱固有の剛体振動があります。これはいくら補強しても止まりません。そこから発生する不要輻射が音を濁らせていることは先に述べた通りです。それに対しタイムドメイン方式ではエンクロージャーは卵型や筒型になります。ユニークな形状ですがこれらの形が強固なことはご存じの通りです。また不要輻射が発生したとしても、リスナーに到達する部分はごくわずかです。
筒はエンクロージャーと言うよりも車の排気管に似た性質をもつ持つので整流筒とでも呼ぶのが適当かも知れません。この筒は支持体として仮想グランドと一体化されたユニットを支えていますが、ユニットとはゲルで遮断されているのでどちら方向にも振動は伝わりません。筒の材料はアルミ、表面をホーニングで硬化したあとで硬質アルマイト処理。構造体としてのパイプ形状の剛性の高さと相まって内部音圧で振動することはありません。ユニット後面からの圧力波はパイプに従って吸音材で減衰しながら下端に抜けます。従来方式のボックスの中では箱内の定在波や構造体での回折や反射、吸音材の影響で汚い音が充満しています。箱内にマイクやパイプを突っ込んで音を聴いてみれば驚きます。この望ましくない音がユニットの振動板(紙や樹脂製)を通じてリスナーに達しているのです。箱内に発音体を置いて外から聴いてみると振動板を通してその音が良く聞こえます。振動板に遮音効果はほとんどないということがわかります。
結果として音はリアルになり、従来聞こえなかった微少な音が聞こえ、音の微妙な表情が聞き取れるように成ります。
従来のエンクロージャにスピーカーユニットをマウントするとボックスの空気ばねが加わりますので最低共振周波数(f0)はユニット固有の値より高くなります。タイムドメインのパイプでは、筒内の空気が低域では振動板と一体となってピストン運動しますので振動系重量に空気質量が付加されたことになり、f0はユニットの固有値より低くなります。また筒内を流れる空気の流れに制動がかかる事と相まって他には無い優れた低域表現力を持ちます。
(時間的歪み・崩壊)
このように再生能力や表現力が格段と向上するとアンプにも同様の性能が要求されます。従来のFドメインの考え方の歪み、すなわち直線歪み(周波数特性)や非直線歪み(高調波歪みなど)は補正補償ができますが、タイムドメインで言う時間歪みは補正も補償もできません。
元に戻せないということからも歪みというより、拡散、崩壊、喪失と言う言葉が適当でしょう。エントロピーの増加です。エントロピーの増加はアンプの至る所で生じます。その多くは電気系よりも電気-機械系で生じます。従来のアンプで聴くと本来聞こえるはずの多くの音が無くなっているのに気付きます。また全ての音が鈍った印象を受けます。



